“原価が安いハンドメイド品を作ってお小遣い稼ぎ”といった趣旨のバラエティー番組のコーナーがTwitterで話題になっている。“ハンドメイドは材料費が100円程度でも1,000円で売れる”という内容だ。しかし、コストや売上のことばかり取り上げられており、ハンドメイド品が誤解されるというツイートが多く見られた。そこで、ハンドメイドにおける、価格、コスト、利益を考えてみる。
“利益”の考え方はいくつもある
“利益”の考え方はいくつもあり、例えば企業会計では、営業利益、経常利益、純利益の3つで、国際会計基準では経常利益ではなく、税引き前利益もある。さらに、ハンドメイドを始めとする製造業や小売りには、「粗利」(売上総利益)という考え方もある。利益といっても、この5種類がある。
このうち、ハンドメイド品の会計に必要なのは、粗利と営業利益の2つだろう。
粗利とは?
「粗利」というのは、1つの商品の価格から、「原価」を引いた利益のことだ。1,000円のハンドメイド品の材料費が100円なら、粗利は900円となる。
粗利=売上-原価
分かりやすく表現すると
粗利=価格ー材料費
だ。
営業利益の計算や理解は難しい
一方の営業利益は、製造に関わった原価を除くすべてのコストを計算しなければならないので難しい。具体的には、接着剤、絵の具、工具、絵の具、資料、さらに細かいことを考えると電気代、家賃、水道代などもあげられる。形がないものとして、アイディア、技術代金、試作品の製造コストなどがある。これらは「営業費」だ。「販管費及び一般管理費」や「販管費」とも呼ばれている。
また、“歩留まり”も考慮しなければならない。歩留まりとは、製造した製品のうち、販売できる品質を満たしている物のこと。手作業なので、材料を切りすぎた、思っていた色に仕上がらなかったなどのミスもある。これも営業費に含めるのが妥当だろう。
売上からこれらの営業費と原価を引いた額が「営業利益」だ。ハンドメイド品を1人で作っていると仮定すると、この営業利益がようやく作者の手取りになる。
営業利益=売上ー原価ー営業費
T witterで話題になったのは、番組でこの営業費に触れていなかったからだろう。
粗利=手取りではない
これら利益の考え方を踏まえると、バラエティー番組やいわゆる“原価厨”と呼ばれる人たちは、粗利しか見ていないことが分かる。工具の代金や、ハンドメイド品が完成するまで試作を繰り返すという工程などということは、まったく見えていない。
価格はどうやって決める?
では、ハンドメイド品などの価格はどのようにして決めるのがいいのだろうか。それは、“マーケット”だ。もちろん営業費や原価、利益も考慮する必要があるが、売り手が高い価格を付けても、それが売れなければ売上につながらないし、利益にもならない。
このマーケットで価格を決める一番分かりやすい方法は、オークションだ。1円からオークションを開始して100円、500円、600円、650円、660円と入札されて、最後に落札されたのがマーケットの価格すなわち適正な価格と考えられる。
これを考えると、価格を決めるのは売り手ではなく、マーケットに参加している買い手というのが正しい。
しかし、スーパーマーケットやコンビニで販売されている物は、売り手が値段を付けている。一見すると、売り手が価格を決めているように思えるが、買い手がその価格は高いと思えば買わない。そうなると、価格を下げるなどの手を打つ必要がある。やはり、買い手が価格を決めている。
マーケットにより価格が異なることもある
また、参加するマーケットにより価格が異なる場合もある。ヤフオク!やメルカリよりも、ハンドメイド品を専門に扱う「minne」の方が高く売れる可能性がある。雑貨屋やアクセサリ店に行けば、大量生産された数多くの商品がハンドメイド品よりも安く売っている。しかし、わざわざminneで物を買う人たちは、ハンドメイド品に価値を感じていることは容易に考えられる。