現在、固定回線の主力は光回線だ。総務省が公表している「情報通信白書平成30年版」によると、2018年3月末現在、固定のブロードバンド回線は3,995万回線。内訳はケーブルテレビが689万回線、DSLは215万回線に対して、FTTH(光回線)は3030万回線だ。ブロードバンド回線のうち77%がFTTHになっている。
NTT東西のADSLは2023年に終了
このように数が減っているADSLだが、すでにNTT東日本とNTT西日本(NTT東西)は、ADSL接続サービスの「フレッツ・ADSL」の新規契約は原則として終了。さらに、2023年1月31日にサービスも終了することを発表している。両社はその理由について、ADSL関連の機器の調達が困難になっていることとしている。NTT東西は、このようにADSLはフェードアウトさせる計画だ。
最後の追い込みでADSL契約者を増やすソフトバンク
そんな中、ソフトバンクは、「Yahoo! BB ADSL」をはじめとするADSL接続サービスを2月末で新規契約を終了すると発表。NTT東西と同様の理由に縮小していくと思ったが、“あおる”ような広告を掲載している。2月末で新規契約を終了するため、ADSL利用者を獲得する最後の追い込みをかけているように感じる。
最大12Mbpsで月額1,800円の接続サービスは悪くない
これらの広告で強調しているのは、最大12MbpsのADSL接続サービス「Yahoo! BB バリュープラン」。2年単位での利用を前提としたいわゆる“2年縛り”だが、利用料金はNTT東日本エリアは月額1,801円(税抜き、以下同じ)、NTT西日本エリアは月額1,808円と安い。
ADSLは銅線を使っているため、交換局から自宅や事業所までの距離が長くなると速度が落ちるという欠点がある。ソフトバンクは、最大8Mbpsから50Mbpsまで速度別で6つのADSL接続サービスを提供している。そのうち、8Mbpsのサービスは、2001年のYahoo! BBの開始から続けているサービスだ。さすがにこの開始当初から同じ機器を使っているとは考えられないし、そもそも最大8Mbpsのサービスを契約している人も少ないだろう。そのため、もっと新しい、つまり通信速度が速い機器に入れ替えている可能性が考えられる。
このような理由から、最大12Mbpsの接続サービスでも、最大50Mbpsの設備を使って、速度を12Mbpsに絞っている可能性がある。ケーブルテレビインターネットはこの手法を多用している。あくまでも推測だが、このような手を使っていたら最大12Mbpsの接続サービスでも10Mbps程度の速度は期待できる。これが月額1,800円程度の価格なら契約する人も多いだろう。
みんな最大1Gbpsが欲しいわけじゃない
我が家のインターネット回線は最大1Gbpsのフレッツ光だ。フレッツ光の利用料金とISP料金を合わせると、月額5,000円程度。こんな田舎であっても、最大1Gbpsの回線がこんなに格安で使えるとはすばらしい時代になった。しかし、このようなスペックが必要な人は少ないかもしれない。
各家庭に引き込んでいる線を確認すると、契約している通信やケーブルテレビの状況がおおよそ分かる。そこで近所を確認すると、3分の1程度がフレッツ光を契約しているようだ。しかし、家族構成から考えても最大1Gbpsは必要としていない世帯もある。
おそらく、我が家というか、わたしは周辺の家庭よりも数十倍の通信量があってもおかしくない。以前、確認したらFire TVだけでも1か月間で50Gバイト分の動画を見ていた。パソコンやスマホも考えると1か月間で、確実に100Gバイトから150Gバイトは超えているだろう。そんなわたしにとって、最大1Gbpsの回線は必要だ。
しかし、わたしの近所の家庭のようにこのような速度の回線を必要としている人はどれくらいいるのだろうか。
例えば高齢者の夫婦が両方ともガラケー。インターネットに接続するのは1台のパソコンで、一番よく使うサービスはWindows Updateということもありえる。そんな世帯は最大12Mbpsで十分だろう。
ケーブルテレビという選択肢もあり
ケーブルテレビインターネットは、低速で低額なコースも用意している。ケーブルテレビは、テレビ、インターネット、電話など複数のサービスを契約することが前提のため、ADSLとは単純に比較できないが、ケーブルテレビ大手のJ:COMは、月額3,980円で最大12Mbpsの「12Mコース」を提供している。一見すると高く思えるが、37の専門チャンネルがセットの「スマートお得セレクト NET12M」だと月額4,995円だ。
しかし、ほかのケーブルテレビ事業者のWebサイトを探してみたが、月額1,800円で最大12Mbpsという手軽なインターネット接続サービスは少ない。しかも、ケーブルテレビは、同一地域でサービスを提供できるのは1社だけのため、選択の余地はない。
その点、Yahoo! BB バリュープランは、全国で契約できるため、よりよいサービスに見えてくる。
LTEを用いた固定式の回線は?
ADSLや光回線ではなく、LTEを利用したインターネット接続サービスもある。そのうちの1つである「SoftBank Air」は、最大350Mbpsで料金は月額4,880円だ。この金額なら、あと1,000円足して光回線にしたほうがいい。同様のサービスとしてUQ WiMAXの「UQ Flatツープラス ギガ放題」があるが、こちらも月額4,380円と高価だ。
