microUSBで給電できる小型のスイッチングハブ ~通信速度は最大920Mbps

4.5

 USB端子を電源とする機器は多い。スマートフォンやタブレットを初め、ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチ、ノートパソコンなど数多い。そんな中にmicroUSB端子で給電できるスイッチングハブがある。エレコムの「EHC-G05PA-SB」だ。

メーカーの保証外の使い方を記載している記事

 エレコムのWebサイトまたは、パッケージなどにはEHC-G05PA-SBはmicroUSB給電に対応しているという記載はない。そのためmicroUSBではなく、一般的な丸型のコネクタの製品が混在または、切り替わる可能性が考えられる。

 またメーカーが保証しているのは、付属のACアダプタを利用した場合だ。ノートパソコンや汎用的なUSBアダプタを用いた場合、故障時の無償修理または、修理も断られることを注意していただきたい。

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EHC-G05PA-SB
1000BASE-T対応 スイッチングハブ - EHC-G05PA-SB
1000BASE-T対応のACアダプター電源の超小型プラスチック筐体5ポートハブです。省エネ法に準拠したエコ省電力タイプで、ループ検知機能も搭載しています。メイン基板に電解コンデンサを使用せず、長寿命設計を実現した高信頼性なスイッチングハブです。

microUSB端子にどうやって給電する?

 EHC-G05PA-SBの電源端子はmicroUSBだ。このmicroUSBを使って充電する機器は、非常に多い。というのも、一昔前に販売されたAndroidのスマートフォンの充電端子がmicroUSBだったためだ。現在は、新製品はUSB Type-Cだが、まだ多くのスマートフォンはmicroUSB。実際、周りのタブレットとスマートホンの電源端子を確認すると、microUSBは3台だが、USB Type-C端子は1台のスマートフォンだけだ。EHC-G05PA-SBはそんな、ありふれたmicroUSB端子から受電するため非常に便利だ。

 EHC-G05PA-SBのmicroUSBの給電端子
EHC-G05PA-SBのmicroUSBの給電端子

 このEHC-G05PA-SBは、データセンターなどネットワークの構築時に役になっているという話を聞いたため試してみた。ネットワーク構築の際、コンセントがないためスイッチングハブが使えない、つまり複数台のパソコンが接続できないという事があるらしい。しかし、EHC-G05PA-SBの電源はUSBなら何でもいい、ということでパソコンのUSBポートを電源に動かしているという。

 それにしたがって配線をしたのがこの通り。右側のUSB端子から電源を取る。左側のノートパソコンのイーサネットポートとEHC-G05PA-SBは白いケーブルで接続している。EHC-G05PA-SBに接続されたもう1本の青いケーブルは、ネットワークにつなぐ。

 これは、一見すると奇妙だ。なお、パソコンのUSB端子とEHC-G05PA-SBはUSBで接続しているが、これはあくまでも電源の供給のため。USBの有線LANアダプタのようにUSB端子にEHC-G05PA-SBをつなげただけでは、ネットワークには接続できない。

ノートパソコンの右側のUSBポートからスイッチングハブに電力を供給。白いケーブルでノートパソコンの左側のLANポートに接続。青いケーブルはネットワークに接続する
ノートパソコンの右側のUSBポートからスイッチングハブに電力を供給。白いケーブルでノートパソコンの左側のLANポートに接続。青いケーブルはネットワークに接続する
microUSBで給電できる小型のスイッチングハブ ~通信速度は最大920Mbps 5
ノートパソコンとタブレットPCを接続した例。これでEHC-G05PA-SBの威力が発揮される。下のタブレットPCはUSBアダプタを介してEHC-G05PA-SBに接続している

転送速度は最大920Mbps

 このようなEHC-G05PA-SBの通信速度はどれくらいだろうか。パソコンとNASの間にEHC-G05PA-SBを接続して通信速度を測定した。結果、TCP Monitor Plusで測定したところ受信の速度最大920Mbps、CrystalDiskMartkでファイルの読み書きの速度を測定したところ、読み込みは116.18Mバイト/秒、書き込みは118.28Mバイト/秒だった。理論値で最大1Gbpsの1000BASEのネットワークでは、これが限界だと思われる。

最大で920Mbpsの通信速度
最大で920Mbpsの通信速度
500Mバイトのファイルを読み込んだ時の速度。116.18Mバイト/秒だった
500Mバイトのファイルを読み込んだ時の速度。116.18Mバイト/秒だった

 この値はどれほどなのか。EHC-G05PA-SBからをSOHO向けのスイッチングハブ「GS108E」に交換して測定した。結果は、受信の最大速度は919Mbps、読み込みは113.25Mバイト/秒、書き込みは117Mバイト/秒だった。

通信速度の最大は919Mbps
通信速度の最大は919Mbps
500Mバイトのファイルを読み込んだ時の速度は、113.25M/秒
500Mバイトのファイルを読み込んだ時の速度は、113.25M/秒
ギガビット8ポート アンマネージプラススイッチ | GS108E | 法人向け | NETGEAR
アンマネージプラススイッチは、VLANやQoSなど、搭載する機能を最小限に絞り、過剰な機能を省くことでリーズナブルな価格を実現した、小規模ネットワークに最適なソリューションです。

 2つのスイッチングハブともにほぼ同じ値で、トラフィックのグラフから見る限りでは、スイッチングハブがネックになっているようだ。そのため、1対1の接続であれば、2つのスイッチングハブともに同等の性能が発揮できる。このように、EHC-G05PA-SBは小さいながらもSOHO向けモデルのスイッチングハブと同等の速度が期待できる。

EHC-G05PA-SBとGS108Eの違いは?

 EHC-G05PA-SBは家庭向けで、GS108EはSOHOレベルから小規模事業者が使う製品で、ユーザー層や製品の信頼性はまったく異なる。

 GS108Eは、一般的なスイッチングハブは異なり、ポートごとトラフィックの優先順位が指定できる。「VLAN」は例えば1番から4番で1つのネットワーク、6番から8番で1つのネットワークだが、5番ポートは両方のネットワークに接続できるといった事ができる。また筐体は金属製のため、放熱しやすい。など、家庭向けのスイッチングハブよりも搭載している機能や信頼性が高い。

 そのため想定されているのは、複数のパソコンがある事務所だろう。SOHOならプライベートと仕事のネットワークを分離させる、小規模事業者なら部署ごとにネットワークを構築。部署ごとに利用できるファイルサーバーを制限できたりする。

ギガビット8ポート アンマネージプラススイッチ | GS108E | 法人向け | NETGEAR
アンマネージプラススイッチは、VLANやQoSなど、搭載する機能を最小限に絞り、過剰な機能を省くことでリーズナブルな価格を実現した、小規模ネットワークに最適なソリューションです。

 一方のEHC-G05PA-SBは、小型で安いスイッチだ。そのため筐体はプラスチックで小型、優先順位などの設定はできないため、家庭で使う製品だ。

待機電力は0.2W、データ転送時は0.9W USBバッテリーでも動作する

 EHC-G05PA-SBは消費電力が少ないことも特徴だ。LANポートに何も接続していない場合は0.2W、先ほどのテストの際は0.86Wだった。そのため、USBバッテリーをEHC-G05PA-SBの電源としても利用できる。試しにバッテリーで駆動させたEHC-G05PA-SBで同様のテストを行ったが、スループットが落ちるようなことはなかった。

 このように消費電力が非常に少ないため、5V/2Aといった急速充電器を使う必要はない。5V/0.5Aの2.5Wの充電器でも十分足りる。USB 2.0では、5V/0.5Aの電力を供給すると決められているので、どんなAVアダプタでも電力不足にはならいと思われる。

LANケーブルを挿していない待機時の消費電力は0.2W
LANケーブルを挿していない待機時の消費電力は0.2W
microUSBで給電できる小型のスイッチングハブ ~通信速度は最大920Mbps 10
パソコンからNASにファイルを転送している時でも消費電力は0.86W
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円柱のUSBバッテリーでも動作する

テレビ周辺のスイッチングハブにおすすめ

3月27日追記

テレビによっては電源を落とすと、USB端子の電源も供給されなくなる場合があるため、以下のような用途には使い方をするためには、確認をすることをおすすめする。

 このようなEHC-G05PA-SBは、小型なこともありネットワークエンジニアは常に持ち歩いてもいいだろう。

 家庭内ではどこで使うのが良いだろうか。テレビの周辺のAV機器をインターネットに接続するために便利だろう。AV機器がネットワークに対応するとともに、テレビの周辺はLANケーブルで乱雑になっていないだろうか。そこでEHC-G05PA-SBを使うと配線がきれいになると思われる。

 一般的にはブロードバンドルーターの有線LANポートは5つポート。この5ポートにテレビ、IP-STB、Blu-rayレコーダ-を接続すると空きがなくなってしまう。ここでEHC-G05PA-SBが役に立つ。

 まずは、LANケーブルを ブロードバンドルータなどからテレビの近くに設置し、EHC-G05PA-SBをつなぐ。EHC-G05PA-SBの電源は、テレビに付いているHDDなどのUSBポートを利用するという具合だ。そこからテレビ、Blu-rayレコーダ、IP-STBに接続すると配線は、多少、すっきりする。

 これまではIP-STBと書いていたが、Fire TV、Chromecast、Apple TVを無線LANで接続している事が多いだろう。しかし、テレビの近くにスイッチングハブを設置するなら、IP-STBも有線LANで接続してもいいだろう。

EHC-G05PA-SBの大きさは?

 EHC-G05PA-SBは非常に小さい。LANコネクタがあるため、これよりも薄くできないだろう。また、一般的なカードよりも少し大きい程度の大きさで、ここまで小さいスイッチングハブを見たのは初めてだ。

一般的な大きさのカードとの比較。大きさの差はほとんど分からない
一般的な大きさのカードとの比較。大きさの差はほとんど分からない
microUSBで給電できる小型のスイッチングハブ ~通信速度は最大920Mbps 12
カードと重ねてみるとようやくEHC-G05PA-SBが一回り大きいことが分かる
EHC-G05PA-SBは非常に薄い。厚さは16mmだが、これはLANコネクタが制約になっている
EHC-G05PA-SBは非常に薄い。厚さは16mmだが、これはLANコネクタが制約になっている