パソコンのバックアップソフトや方法は数多くある。一般的には、最初のバックアップ時にオリジナルのHDDのファイルを保存。その次のバックアップでは、変更があったファイルを増分や差分といった方法で保存する。しかし、無償版のAOMEI Backupper Standardは「インテリジェントセクターのバックアップ」でセクター単位でバックアップを行うことが特徴だ。
AOMEI Backupperのレビューに当たりAOMEIさまからライセンスをいただきました。ありがとうございます。
セクターとは?
一般的には、HDDやSSDにファイルを保存する際、一定のサイズに分割される。また、HDDやSSDは、「セクター」と呼ばれるブロックに分割されている。この分割されたファイルをセクターに書き込むことでHDDやSSDにファイルを保存している。
このようにして保存されるファイルだが、1つのファイルが連続したセクタに記録されているわけではない。数個であったり、大きなファイルだと数十個、数百のセクタに分断されて保存している。そのため、ファイルシステムが、どこのセクタにどのファイルがあるのか管理している。このような処理は、ユーザーが意識する必要はない。
セクター単位でバックを行う「インテリジェントセクターのバックアップ」
一般的にバックアップソフトは、ファイル単位で行っている。更新されたファイルがあると、そのファイルが記録されているセクタをすべてバックアップファイルに書き込む。
しかし、AOMEI Backupperはセクター単位でバックアップを行う。セクター単位のバックアップの場合、HDDやSSDを丸ごとバックアップすることもある。そうなると、1Tしか使っていない4TバイトのHDDであっても、バックアップのために4TバイトのHDDが必要になる。
しかし「インテリジェントセクタ」は、データが書き込まれているセクターのみバックアップを行う。そのため、バックアップにかかる時間が短くなり、ファイルは小さくなる。
バックアップ時間とファイルサイズを比較する
このインテリジェントセクターバックアップはどれほどの効果があるのか。パーティションに記録されたセクターを完全にバックアップする「完全なバックアップを作成」と比べた。
まずはフルバックアップ
このバックアップの方法だが、「バックアップ」→「システムバックアップ」→「オプション」→「バックアップの方法」の「インテリジェントセクター」が「インテリジェントセクターバックアップ(お勧め)」を選択して「はい」をクリックすると選べる。





システムバックアップの画面に戻るので、バックアップファイルを保存するディレクトリーを選択、「開始」でスタートする。
最初にフルバックアップを行ったときは、「使用領域」は150Gバイト、「空き領域」は87.1Gバイト、「容量」は237Gバイトだ。

その結果、
- 「インテリジェントセクターバックアップ(お勧め)」
18分12秒/67.8Gバイト - 「完全なバックアップを作成」
35分45秒/120Gバイト
だった。
「インテリジェントセクターバックアップ(お勧め)」
18分12秒/67.8Gバイト「完全なバックアップを作成」
35分45秒/120Gバイト
ファイルのサイズもバックアップ時間もインテリジェントセクターバックアップが優れている。
バックアップの差分と増分
バックアップは一定期間ごとに行わないと意味がない。その際、再びHDDやSSDをフルバックアップするのではなく、すでにあるバックアップファイルとの差だけバックアップを取る。一般的には「差分」と「増分」の2つの方法がある。
増分は、前回のバックアップとの差を保存する方法。毎日増分のバックアップを行う場合、初回のフルバックアップ、初回と1日後の差、1日後と2日後の差、2日後と3日後の差、3日後と4日後の差といった具合に増えていく。
増分は差分よりもファイルサイズが小さくなるが、例えば“3日後と4日後の差”のファイルに問題があると、フルバックアップから4日よりあとの状態に戻すことはできない。
差分は、最後にフルバックアップを行った時との差を保存する方法だ。毎日、差分バックアップを行った場合、フルバックアップ、フルバックアップと1日目の差、フルバックアップと2日目の差、フルバックアップと3日目の差、フルバックアップと4日目の差、フルバックアップと5日目の差とファイルが増えていく。
差分は増分と比べると、フルバックアップから時間が経つほどファイルサイズが大きくなる。しかし、例えば4日目の状態に戻したい場合、フルバックアップのファイルと“フルバックアップと4日目の差”があれば復旧できる。
バックアップは「インテリジェントセクターバックアップ」で“差分”がおすすめ
この差分と増分インテリジェントセクターバックアップでは、どのように異なるのか。
最初に完全バックアップを行ったパソコンを1週間使用。2回目は使用領域は126Gバイト、空き領域は110Gバイト、容量は237Gバイトだ。
- 「インテリジェントセクターバックアップ(お勧め)」
増分:30分44秒/107Gバイト
差分:6分05秒/0.99GBバイト - 「完全なバックアップを作成」
増分:15分54秒/65.7Gバイト
差分:2分45秒/65.7Gバイト
バックアップの速度が一番速かったのは、完全バックアップの差分をバックアップした場合で2分45秒だった。しかし、ファイルサイズは65.7Gバイトで使用領域のおおよそ半分にも達した。速度が速いのは評価できるが、ここまでファイルが大きいと実用的ではない。
また、一番ファイルサイズが小さいのは、インテリジェントセクターバックアップの差分で0.99Gバイトだ。こちらはバックアップに6分5秒かかった。完全なバックアップの差分には勝てないが、2分45秒と6分の差。そのため、インテリジェントセクターバックアップで差分が実用的だろう。
ファイル単位とセクター単位の違いとは
ファイル単位でのバックアップは、少しでもファイルが変更されると、ファイルを丸ごと保存する。一方のセクター単位は、ファイルの書き換わった部分だけ保存する。例えば100Mバイト分の動画ファイルがあり、ほかの動画を加えて110Mバイトに増えた場合。ファイル単位のバックアップの場合、110Mバイト保存する。一方のセクター単位の場合は、100Mバイトのうち増えた分の10Mバイトだけ保存する。そのため、セクター単位のバックアップは効率が良い。
利点としては、バックアップに必要なディスク容量が小さくなることがある。また、ファイルが破損している場合、ファイル単位のバックアップソフトでは処理中に止まってしまう可能性がある。しかし、セクタ単位のバックアップソフトの場合、ファイルの修復までは行えないものの、壊れたファイルをそのままバックアップできる。