クレジットカードの加盟店に設置されている端末は、接触式ICチップに対応した物に入れ替わっている。これは、磁気ストライプよりも接触式ICチップの方が偽造が困難なことが理由。なるべく接触式ICによる決済に移行させたいということだろう。そんな時代なのに驚くようなクレジットカード決済に出くわした。「インプリンタ」と呼ばれる転写機で伝票を発行するというものだ。
20世紀の遺産「クレジットカードの転写機」インプリンタ
先日、久しぶりに百貨店に行った。その際、最上階のレストラン街で昼食をいただき、レジに行くと、クレジットカード会社のロゴが掲げられていない。しかし、レジの奥に置いてあるクレジットカードの決済端末が見えた。おそらくクレジットカードは使える。いつものようにロゴが貼っていなくても聞いてみた。
「クレジットカードは使えますか?」
「はい、使えますよ」
という返答。
しかし、なぜか店員はレジを離れて何かを持ってきた。それは、カーボンを使った転写機だった。
クレジットカードは、番号や名前に凹凸がある。これは「エンボス」と呼ばれており、カーボン紙と転写機でクレジットカードの表面の文字を伝票に写すためにある。
しかし、このインプリンタは最近ではほとんど見なくなった。JR東日本のSuica一体型のクレジットカード「ビューカード」など、このエンボスがないクレジットカードも増えているほどだ。
クレジットカードを決済端末に通したのにカーボン転写決済という謎
さらになぜか、決済端末にもクレジットカードを通した。そののち、決済端末の伝票とカーボン転写の2枚の伝票にサインをしてようやく会計が終わった。これなら現金で払った方が早い。
現在のクレジットカード決済端末は、ネットワークに接続していることが前提だ。クレジットカードを端末に通すと、限度額を超えていないか盗難カードではないか、などをカード会社に照会して、問題がなければ決済できるという仕組みだ。
しかし、このカーボン転写式の決済は電子化していないため、このような照会はできない。そのため、このレストランは端末でカード会社に照会をかけて、問題がなかったため伝票で決済をしたのだろう。
また、このレストランは、百貨店のテナントの1つ。発行された伝票は、百貨店専用のものだった。端末にも通してカードの情報を伝票に写したのは、この点が関係しているのかもしれない。
カーボン転写式は廃止すべき
このカーボン転写式の決済だが、今となってはセキュリティーが甘い。クレジットカードに記載されている文字がそのまま転写されるため、クレジットカード番号、有効期限、名義の3つの情報が伝票にすべて写されてしまう。これだけの情報があれば、インターネットでクレジットカード決済で買い物ができる。
さらに、この伝票は月末などの締日にまとめてFAXまたは郵送でクレジットカード会社に送っているのだろう。その間、クレジットカードの情報が記載された伝票が店舗に保管されることになる。紛失することも考えられる。
クレジットカード会社は、通信回線が確保できない加盟店のためにカーボン転写式も残しているのかもしれない。しかし、現在においてそのような場所はほとんどない。もう、カーボン転写式の決済は廃止するべきだろう。