「NAS」(Network Attached Storage)いわゆる、ファイルサーバー。現在は、専用機が販売されており、有線LANのケーブルと電源を接続しWebブラウザで設定すると使える。しかし、パソコンでもNASが自作できる。ここでは、「openmediavault」をインストールしてNASを構築する。
openmediavaultを選んだ理由
openmediavaultを選んだのは、Webブラウザーで管理できること、インターフェイスが日本語、IPv6とファイルシステムの「Btrfs」に対応していることなどがあげられる。
また、必要とするスペックが低いのも特徴だ。
openmediavault本体のシステムドライブとデータドライブは別
システムドライブのおすすめは32GバイトのSSD
openmediavaultは、openmediavault本体がインストールされた「システムドライブ」と、ファイルを保存する「データドライブ」を別に用意する必要がある。面倒だとは思うが、システムドライブ、データドライブに加えてバックアップドライブの3つを別々にする方が、管理がしやすく安全だろう。
システムドライブだが、仕様には4Gバイトとあるが、今となってはこのような少ない容量のドライブを見つけるのは困難だ。しかし、いくつか32GバイトのSSDが販売されている。このようなopenmediavaultのシステムドライブでの利用を想定しているのだろう。
価格は1,200円から3,000円程度。Transcendの製品は3,000円でほかの製品よりも高いが、品質や保証、サポート体制が整っているため、安心して購入できる。また、48Gバイトで1,200円という製品もある。こちらはTranscendのように保証があるのかサポートの体制はどうなのかまったく分からない。
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データドライブはウェスタンデジタルのNAS向けHDD
データの保存用とバックアップのHDDは、ウェスタンデジタルのNAS向けのHDDがおすすめだ
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データドライブに中古のHDDを採用するのも選択肢の1つだ。NASに必要な容量が1Tバイト程度という場合。3TバイトのHDDと比べると、1TバイトのHDDは単価が高い。そのため、中古の1TバイトのHDDを2台購入。1台の新品のHDDよりも、多重化した中古の2台のHDDよりも信頼性は高いと考えられる。
この中古のHDDもウェスタンデジタルのNAS向けの製品が販売されている。下記のリンクは新品の製品のページが表示されるが、画面の右側で中古品が選択できる。
【国内正規代理店品】Western Digital WD Red 内蔵HDD 3.5インチ NAS 用 1TB SATA 3.0(SATA 6Gb/s) WD10EFRX
USBメモリーもシステムドライブとして使える
システムドライブは、マニュアルにも書いてる通りUSBメモリーも使える。試しにUSBメモリーへのインストールを行ったが、16Gバイトはパーティションの自動設定が行えなかったが、32Gバイトでは正常に動作した。使い道がない32GバイトのUSBメモリーがあれば、システムドライブに利用するといいだろう。
なお、openmediavaultはほかのOSと同様に頻繁にファイルの読み書きを行う。そのため、USBメモリーを使うと数週間で故障する可能性がある。これを防ぐためには、openmediavaultのプラグイン「openmediavault-flashmemory」のインストールが必須だ。
しかし、システムドライブはSSDを使うことをおすすめする。そもそも、USBメモリはファイルを頻繁に書き換えることを想定して作られていない。USBメモリーとプラグインによるシステムドライブは、あくまでもソフトウェアでの制御であるため信頼性は低いと考えられる。
openmediavaultに必要なハードウェアは?
そのためopenmediavaultを動作するために必要なパソコンのスペックや構成は
- CPUはx86-64またはARM互換プロセッサ
- メモリーは1Gバイト以上
- システムドライブ用の32Gバイト以上のSSDまたはHDD
- データ保存用のHDD
- バックアップ用のHDD(必要に応じて)
だ。
CPUはどれほどのスペックが必要なのか、はっきり書かれていない。しかし、openmediavaultは軽量なのが特徴のため古かったり遅かったりするCPUでも問題なさそうだ。
今回、使用したパソコンは、CPUはCore i3-2100T、メモリーは16Gバイト、システムドライブは128GバイトのSSD、データ保存用は1TバイトのHDD、バックアップ用は3TバイトのHDDだ。
Core i3-2100Tは、2011年第1四半期に発売された製品。コアは2つでスレッドは4、ベース動作周波数は2.5GHz。TDPは35Wのため、デスクトップ用のCPUとしては低消費電力だ。このようなCPUでも問題なく動作するか気になるところだ。
openmediavaultのインストール手順
大きく分けて
- インストール用USBメモリーの作成
- openmediavaultのインストール
の2工程がある。今回は、インストール用USBメモリーの作成とopenmediavaultのインストールを行う。
インストール用USBメモリーの作成
openmediavaultは、イメージファイルをダウンロードして、USBメモリーに書き込み、パソコンに接続してインストールする。一般的なLinuxやWindowsと同じだ。
なお、イメージファイルの書き込みのソフトによっては、openmediavaultのインストールが起動しない場合がある。そのため、openmediavaultでも推奨されている「Rufus」だと確実だ。
openmediavaultのイメージファイルもURLを開くと自動的にダウンロードが始まる。
2つのソフトイメージファイルがダウンロードできたら、次は書き込みだ。
- openmediavaultのイメージファイルをダウンロード
- 「Rufus」をダウンロードして起動
- 「デバイス」でopenmediavaultのインストーラーを書き込むデバイス(USBメモリー)を選ぶ
- 「選択」でopenmediavaultのISOファイルを開く
- 「スタート」をクリック
- 「ダウンロードが必要です」にて「はい」をクリック
- 「DDイメージモードで書き込む」をクリック
- 書き込むメディアがすべて消去されるというメッセージが表示されるので確認して「OK」
という手順。
openmediavaultのインストール
openmediavaultをインストールする際。パソコンに接続するのは、システムドライブだけにする。データドライブは、後の設定で追加するので問題ない。インストールは、各種Linuxをインストールした経験がある人なら簡単だろう。画面キャプチャで追っていく。また、openmediavaultのマニュアルとほぼ同じだ。
設定に続く
オンラインストレージもNAS専用機もあるのになぜパソコンで構築するのか?
パソコンでNASは拡張性が高い
NAS専用機が出回るまでは、Windows Serverまたは、LinuxをOSにSambaをインストールて構築する事がが多かった。しかし、NASの専用機が出回るようになると、ハードルは一気に下がった。NAS専用機に電源とLANケーブルを挿して、Webブラウザで設定をするだけで利用できるようになったためだ。
その一方、openmediavaultのようにNASに特化したOSも数多く見られる。いずれもLinuxまたFreeBSDをベースにしたもので、Webブラウザから操作できるため、コマンドが分からなくてもNASが完成するというものだ。
このように、NAS専用機が販売されているのになぜ、自作をするのか。それは、拡張性の高さにある。
ハードウェアとしての拡張性は、HDDやSSDを数多く設置できることが大きい。NAS専用機の価格は、装着できるHDDの数とおおよそ一致する。ソフトウェアの拡張性も高く、ウイルス対策ソフトやUPS(無停電電源装置)との連携、Dockerによる仮想化環境の構築が可能だ。
NASとオンラインストレージの併用
オンラインストレージがメインでバックアップのためにNASを設置するというのも理由の1だ。
最近、ストレージの見直しを行っており、かなりのデータをNASからOneDriveに移行した。OneDriveなら、お金さえ払えば何も考えなくてもいい。データが消失する可能性は自宅のNASよりもずっと低い。履歴も残り、人為的なミスでファイルを失うことがない、ウイルスチェックもある、インターネット接続さえあればどこからでもファイルが参照できるのも決め手だ。
自宅のNASには何を保存する?
それではなぜ、NASを構築するのか。それは、音楽ファイル、写真のバックアップ、パソコンのシステムバックアップなど大きなサイズのファイルがあるからだ。
音楽は自宅では、パソコンでソニーのプレイヤー「Music Center for PC」で聞いている。ここで参照するのはNASに保存した音楽ファイルだ。外出先では、「Google Play Music」。これは、Googleにアップロードした音楽ファイルを再生している。
一方の写真は、自宅でも外出先でもGoogleフォトを使うようになった。パソコンではWebブラウザー、スマートフォンではアプリを使っている。
このGoogle Play MusicとGoogleフォトの共通点は、音質や画質は落とすが、保存できる容量や曲数、枚数が莫大であるということだ。
音楽ファイルは手元に、AACの320kbpsまたはハイレゾの3Mbps程度を保存している。Google Play Musicに保存すると128kbpsのMP3にダウンコンバートされるが、5万曲も保存できる。
一方のGoogle フォトは、写真は1,600万画素、動画は1080pに縮小されるが無制限だ。JPEGの写真は1,600万画素があれば十分だ。しかし、一眼レフカメラで撮影したRAWファイルはアップロードするとストレージの占有サイズとしてカウントされてしまう。さらに、RAWファイルは1枚あたり数十Mバイトにもなる。
このように、Googleのサービスを使うと音楽と写真はほぼ無制限で保存できるが、元のファイルよりもビットレートが落ちる。そのため、手元のNASでも保存しておきたいというわけだ。
さらに大きなデータを保存する必要がある。それは、パソコンのシステムバックアップだ。データはほとんどOneDriveに保存しているため、PCが故障してもデータを失うことはない。
このパソコンのシステムバックアップは、数十Gバイトや数百Gバイト単位のファイルサイズとなり回線やストレージを圧迫する。初回のバックアップで百Gバイト単位、その後のバックアップでも数Gバイトのデータを保存する必要がある。そうなると、現在契約している1Tバイトのオンラインストレージもかなり圧迫しそうだ。
このように、まだまだすべてのファイルをオンラインストレージに預ける体制は整っていない。そのため、オンラインストレージとNASの両方を使い分けることにした。